- 歯原性腫瘍 -
- - エナメル上皮腫の臨床所見 - -
無痛性の顎骨の腫脹で、大きくなると顔面が非対称性となる。顎骨の膨隆、変形、歯の移動を訴えて来院することが多い。この無痛性腫脹は数年に及び漸次大きくなってくる。炎症を伴うか、感染しないかぎり原則的に疼痛を訴えることはない。顎骨の膨隆や腫脹をきたした期間は、1年以上4.5年以内が全症例の50%を占めている。大きくなった症例は1400gのものもある。エナメル上皮腫はかなり巨大化しても、それ自体が潰瘍を形成することはまれであるが、口腔粘膜を破り増殖し、対咬歯との接触などによる広範囲の潰瘍形成がみられることがある。上顎骨に発生したものは外側へ進展するのみならず、上顎洞や鼻腔側をおかすことがある。エナメル上皮腫のある症例において、低タンパク血症が認められている。これは腫瘍内の嚢胞腔から血液タンパクの漏出が起こるためと考えられ、顎切除後は回復している。小児の発生は比較的まれとされているが、山崎ら(1980)の8症例の報告によると最年少者は2カ月の男児上顎部であり、男児5例、女児3例で4例が下顎、3例が上顎に認められている。
X線所見は顎骨中に多房性、まれに単房性の境界明瞭な骨吸収像で、嚢胞状を呈する。多房性嚢胞の隔壁は明らかで、単房性のもので、下顎智歯の埋伏歯を伴う場合には組織診断が必要である。下顎臼歯より前方に発生したものは往々にして蜂巣状を示すことがある。エナメル上皮腫は長期にわたり顎骨内で増大するため、歯の移動、傾斜、動揺をきたす。歯根の移動方向によりその初発部位を推測することも可能である。エナメル上皮腫の増殖に伴い、X線的に歯根の吸収をきたす。伊賀ら(1980)によるとこの歯根吸収は48.5%に認められ、病巣中に突出した歯根の吸収は7.2%に認められている。
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