- 歯原性腫瘍 -
- - エナメル上皮腫の病理学的所見 - -
エナメル上皮腫は肉眼的に嚢胞の部分と充実性の病巣から成り立っている。嚢胞腔には帯黄色の透明な内容液、時にコレステリンを含むもの、剥離細胞を含み粘稠なものがあり、出血を伴う場合には褐色を帯びている。大きい嚢胞壁は薄く骨と容易に剥離することができる。充実性腫瘍巣の割面には小さい多数の嚢胞が認められることが多い。エナメル上皮腫の組織学的分類は、わが国においては宮崎、荒井(1939)の4型分類、のちにこれを基とした石川(1957)の分類がある。この分類による・型が濾胞性エナメル上皮腫で、宮崎、荒井の・型はエナメル上皮線維腫である。国際分類として濾胞型
follicular type、叢状型 plexiform type、扁平上皮化成型 squamous metaplastic
type、顆粒細胞エナメル上皮腫granular cell ameloblastoma、その他に分けられている。
濾胞型エナメル上皮腫は典型的なものといえる。組織像は発育歯胚のエナメル器の細胞に似ている。上皮巣の周辺細胞は高円柱状、円柱状、または立方状、円形の細胞で単層または数層の配列をとる。これらの細胞はエナメル芽細胞に類似している。病巣中心の星ぼう状細胞はエナメル器のstellate
reticulumの細胞に似ており長い突起により細胞相互が結合している。この濾胞は大きくなると中心部は細胞が退行性変性に陥り、嚢胞化をきたす。間質はよく発育した結合織または硝子様変性をきたし、いわゆる間質嚢胞を形成することがある。エナメル上皮腫の拡大性増殖は濾胞内の嚢胞化と間質嚢胞の形成による癒合などにより漸次大きくなるものである。濾胞型エナメル上皮腫にはいろいろの亜型あり、円柱状の周辺細胞をもたないもの、反対にほとんど中央部の星ぼう状細胞がなく、高円柱状細胞の小濾胞のみのもの、高円柱状細胞から成るろ胞とその周囲に存在する、ヘマトキシリンに好染する小形円形細胞から成るもの、濾胞巣がすべて小型の円形細胞のみから成るものも認められる。
叢状型エナメル上皮腫は炎症反応による腫瘍上皮の索状または叢状の増殖病変である。間質に炎症性の細胞浸潤や血管の拡張を伴うことが多い。間質は結合織の発育がよくなく、硝子様変性をきたしている。壁エナメル上皮腫はこの型の所見をとることが多い。
扁平上皮化成型または棘細胞型エナメル上皮腫acanthomatous ameloblastoma
は濾胞型の中央部星ぼう細胞が局部的にあるいは全般的に棘細胞化または扁平上皮化成
squamous metaplasiaをきたすか、角化を示すものである。
顆粒細胞エナメル上皮腫は濾胞型病巣のなかに好酸性の細顆粒をもった、円形、卵円形の大きい細胞が出現する。好塩基性の濃縮した細胞核をもち、細胞化学的にこの顆粒の主体はライソソ−ム顆粒である。すなわち酸ホスファタ−ゼ活性や
Β−グルクロニダ−ゼの活性が高く酸化酵素の活性が低いかこれを欠いている。電顕的にもこれらの所見を裏づける所見が認められ、最近レクチン結合性の研究からライソソ−ム前駆物質も証明されている。以上の所見は、この顆粒細胞は唾液腺腫瘍にみられるoncocyteとはまったく生物学的性状を異にすることが明らかである。元来この型のエナメル上皮腫はkrompecher(1918)によりpseudoxanthoma
zellen、またSiegmund(1926)によりKolloidzellen とよばれていたものである。AFIPの408例のうち20例、5%が顆粒細胞性エナメル上皮腫であり、20〜40歳に全症例の3/4が発症し、平均年齢は40.7歳であったと述べている(Hartman、1974)。
エナメル上皮腫の一部にPAS陽性の粘液様物質の存在を認めることがあり、これをmucinous
またはmucoacanthomatous ameloblastoma という(Hartenianら、1976、Hodson、1957)。エナメル上皮腫の病巣には一般的に石灰化を認めないが、きわめてまれに石灰沈着をきたすことがある(石川、1959)。
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